モノクローム [詩・画]
あの頃はよかった
そうつぶやいた声は
とてもか細くて
目の前にいる私の 肩越しに
とても遠くを見ながら
ゆっくりと閉じた その瞼の裏に
遠い日の思い出を映し出す
フィルム映画のように
コマ送りで見る あの頃の景色
記憶のかけら 幸せそうな笑顔
それでも
思い出はモノクローム
鮮やかな記憶も
いつか色を失ってゆく
器をなくした心には
とどめることもできない
なぜだかとても悔しくて
独りよがりに 歯を食いしばる
思い出が こぼれてゆかないように
目の前の私を ただ
抱きしめて欲しかった
あの頃はよかった
そうつぶやいた声は
とてもか細くて
記憶のかけらとともに
あの空の中へ
少しずつ消えてゆく
(C) 2020 Naho Yūki All right reserved
過去・今・未来 [詩・画]
何度目かの季節
振り返り 数えることなど
意識もないままに
おめでとうの言葉を 二人分
重ねてきました
ほら見て
あの後ろ姿を
いつの間にか大きくなった
あの子たちの歩んだ道に
ささやかな花を添えてね
見てきたことや
過ごしてきた時も
二人分にして
心に焼き付けた
見守るというには
穏やかではない日々も
心揺さぶられて
声にならない苦しみも
悔しさも
あの子たちの笑顔と
努力と
夢と希望が
私を支えてくれました
この先に
私にできる事なんて
もうそんなにないけれど
あの子たちの人生に
親としていれる喜び
それだけで
ただそれだけで
どんなにつらかった日々も
素晴らしい時間になる
思い出が今を これから先を
きっと ずっと
支え続けてくれる
過去から今
今から未来へと
(C) 2020 Naho Yūki All right reserved
lose [詩・画]
何年もの間
変わらない この想い
いっそ
伝えてしまおうか
悩んだり 諦めたり
今日も夢を見て
喉の奥で飲み込む言葉
答えなんて分かってる
前を歩く後ろ姿も
変わらない ずっと
今を変えたい
変わりたい
変わりたくない
重ねた年に 固執して
もう 怖くて言葉にできない
強く生きるってなんだろう
いつの間にかに
身につくのかな
傷ついて 苦しんで
口にできないまま
寄り添う影に
夢を重ねて泣いた日々
今を失いたくなくて
離れた指先で
互いのリアルをなぞる
甘えたくて
甘えたくなくて
崩れてしまいたい
ならばいっそ この手で
壊してしまいたい
(C) 2020 Naho Yūki All right reserved